医療法人の設立認可申請にあたって、果たして法人化後の医療法人が安定した医療を提供することができるかが重要な論点となります。
この点、「資金の裏付け」を申請の中で証明する必要があります。
具体的には一定の財産を拠出する必要があるのですが、その拠出の方法として認められているのが「基金」と「寄付」です。
「基金」は、医療法人に拠出された金銭その他の財産を指し、医療法人がその財産の拠出者に対して医療法施行規則及び医療法人と拠出者との間の「合意」の定めるところに従って返還義務を負うものを言います。
財産拠出に際してこの「基金」を採用する場合には、医療法人の定款に明確に定めることが必要です。
一方、「寄付」は文字通り財産を無償で寄付する行為です。
「基金」と異なって拠出者は医療法人に対して一切返還を求めることができません。
逆に言えばいくら基金を採用したつもりでも、定款で「基金」について定めておかなければ「寄付」と扱われてしまいます。
基金の拠出者は社員であるとは限りません。
一方で、基金を拠出していたとしてもその拠出者が社員でない限りは医療法人に対して議決権を有しません。
実際のところ「基金の拠出者」には要件や適格性が定められておりませんので、極端な話をするとどんな人でも拠出者になることができるとは制度上言えます。
ただ、医療法人の設立の際は社員となる方が拠出したほうが都道府県からスムーズに認可を受けられますし、理事長となる方が拠出したほうが進めやすいと思います。
私も実際に都道府県などではそのように指導する場合が多いイメージがあります。
基金として拠出できる財産にはどのようなものが該当するか、都道府県によって考え方が異なる場合もありますが、一般的には以下のようなものでしょうか。
①預貯金・現金
②医業未収金
③医薬品、衛生材料等の資産(棚卸資産)
④土地、建物、医療用器械備品等の有形固定資産
⑤電話加入権等の無形固定資産
⑥建物保証金、敷金等のその他の資産
預貯金や現金はまさにその額通りの評価となりますが、金銭以外の財産の評価方法はどうなるのでしょうか。
金銭以外の財産の拠出に必要な手続きに関しては厚生労働省の通知等で説明されていますが、まず金銭以外の財産を拠出の目的とするときには、その旨並びに当該財産の内容及び価額が相当であることについて、弁護士、弁護法人、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(現物拠出財産が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価)を受けなければなりません。
この点、以下の場合には証明が不要です。
①市場価格のある有価証券
②現物拠出財産が社団医療法人に対する金銭債権
③現物拠出財産の価額の総額が500万円を超えない場合
個人から医療法人化するのだから資産は全部法人に移せばいいのでは?といいたいところですが、例えばクリニックの賃貸借を簡単に法人に移せるのか、ユニットのリース名義を個人から簡単に法人に変更できるのか、先生が個人的借り入れた金融機関の融資はどうなるのか、など、検討すべき点は沢山出てきます。
法人化前にしっかりと理解しておくことが必要です。