行政書士の方波見です。
今回は行政手続きの本質と経営に与える影響を解説します。
「許可が必要だから申請した」
「役所の指導で取得した」
許認可に関する多くの相談では、このような受動的な言葉が聞かれます。
確かに、法律上の義務や行政指導に基づき、取得を“強いられる”場面もあります。
しかし、許認可とは単なる手続きではなく、事業の成長と信頼を支える「経営資源」の一つであることをご存じでしょうか。
「許認可」とは、法律によって特定の行為を原則禁止しつつ、一定の条件を満たす者に対して例外的にその行為を認めるための行政行為です。
分類としては、大きく以下のような種類に分かれます。
許可:原則禁止されている行為を、行政庁が特定の条件下で認める(例:建設業許可、産業廃棄物収集運搬業許可)
認可:当事者間の契約等に対し、行政が有効性を与える(例:医療法人の定款認可)
届出:事後的に行政に通知することで手続きを完了させる(例:建設業や産業廃棄物処理業の変更届など)
このように、「許認可」と一括りに言っても、その実態は多様であり、目的、効果、手続き方法、法律構成もそれぞれ異なります。
許認可というと「手間のかかる面倒な作業」として捉えられがちです。
しかし、経営においては以下のような効果も持ち得ます。
許可を取得することで、行政によるチェックを通過した事業者として、顧客・取引先・金融機関などからの信頼が大きく向上します。
公共事業や大手元請業者との契約では、「許認可の有無」が業者選定の必須条件になる場合があります。
無許可営業や届出漏れは、刑事罰や行政処分の対象となることがあります。
許認可を取得・維持すること自体が、リスクマネジメントの一部でもあるのです。
許認可は「一律の手続き」ではなく、業種・地域・事業規模・法人成りの有無などによって要件が大きく変動します。
例えば建設業であれば「経営業務の管理責任者」「専任技術者」「財務基盤」「欠格要件」などが問われ、産廃であれば「車両設備・事業計画・経理的基礎、欠格要件」などが中心になります。
こうした複雑な要件を読み解き、現実の経営と制度要件を照らし合わせて整理するのが行政書士の役割です。
中には、許可申請を「様式を埋めて提出すれば良い」と思っている事業者もいます。
しかし、一つ一つの記載に法的根拠があり、不備や虚偽記載はリスクになります。
また、複数の許認可を同時並行で取得したり、会社設立と連携させたり、補助金・助成金と組み合わせることで、申請を「経営計画」の一部として活用することも十分に可能です。
許認可は義務であると同時に、事業を成長させる“チャンス”でもあります。
表面的な手続きとしてではなく、自社の立ち位置・信頼性・将来性を形にするツールとして、「戦略的に取得・維持する」という視点が大切です。