運送業とは
トラック、トレーラー等を使用して荷物を運ぶ事業を一般的に「運送業」と呼びますが、運送業は貨物自動車運送事業法という法律で「一般貨物自動車事業」、「特定貨物自動車事業」、「貨物軽自動車運送事業」の3種類に区分されています。この中で当事務所が最も得意とする分野が「一般貨物自動車事業」です。
では、「一般貨物自動車事業」とはどう言った事業をいうのでしょうか。
他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものと定義されています(貨物自動車運送事業法2②)。
分かりやすく言うと、「他人から依頼を受けてトラックで貨物を運び、運賃をもらう事業」のことです。
なお、「特定貨物自動車運送事業」とは、貨物の輸送の依頼主が特定の1社のみとなる運送業のことをいい、「貨物軽自動車運送事業」とは、軽貨物自動車を使用し貨物を運ぶ運送業のことをいいます。
もちろん、当事務所でも対応可能です。
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運送業許可の要件
一般貨物自動車運送事業免許申請には、大きく分けて4つの要件があります。
1つ目が「資金」、2つ目が「人」、3つ目が「場所」、4つ目が「車両」です。
この4つすべての要件をクリアする必要があります。
更に、申請の受付後には役員が「法令試験」を受験する必要があるのですが、合格できなかった場合には要件を満たしていても許可が下りませんので、これも要件のひとつと言えます。
1.資金の要件
資金の要件とは、許可を受けようする会社等が、運送事業を経営する資金的な能力を有しているか否かを判断する一定の条件のことです。 具体的に言いますと、「一般貨物自動車運送事業経営許可申請書」の「事業の開始に要する資金及び調達方法」の様式に従って細かく算出した資金が実際に確保できていることを、金融機関から発行された残高証明書によって証明します。 資金の「算出」と「裏付け」が必要なわけです。
①実際にどのような資金が必要か
許可上求められる資金の種類は、以下のように分けることができます。
- ① 人件費
- ② 燃料費
- ③ 油脂費
- ④ 修繕費
- ⑤ 車両費
- ⑥ 施設購入・使用料
- ⑦ 什器・備品費
- ⑧ 施設賦課税
- ⑨ 保険料
- ⑩ 登録免許税
- ⑪ その他費用
具体的にどのくらいの資金が必要なのかはケースバイケースなので一概には言えませんが、かなりまとまった金額が必要であることは間違いありません。
例えば、役員報酬や従業員給与をいくらで設定するのか、実際に何台の車両を購入するのか、購入する車両は新車なのか中古車なのか、車両1台あたりの月間の走行距離や高速道路使用料金はいくらになるか、営業所・車庫は賃貸なのか自社所有物件なのか、新規で購入するのかなど、様々な内容によって大きく変動します。
確保しなければならない資金の額によっては銀行借り入れも検討しなければならないでしょう。そうなれば、実際の事業開始から逆算して、申請前に金融機関等から融資を受けなければなりません。
実際、申請書提出段階では必要な資金額に対応した「預金残高証明書」を提出する必要がありまから、申請者には計画的な動きが求められます。
2.人の要件
人の要件は、以下のようなものがあります。
- ① 申請者が欠格事由に該当していないこと
- ② 運転者を5人以上確保又は確保予定であること
- ③ 事業用自動車の台数によった運行管理者を確保又は確保予定であること
- ④ 整備管理者を確保又は確保予定であること
- ⑤ 運行管理補助者と整備管理補助者を確保又は確保予定であること
以下、それぞれについて説明しましょう。
①申請者が欠格事由に該当していないこと
運送業許可を申請する場合は、個人であれば個人事業主本人、法人であれば法人のすべての役員が以下の事由に該当してはいけません。
これを「欠格事由」といいます。
1年以上の懲役又は禁錮以上の刑に処され、その執行が終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可取消しを受け、その取消しの日から2年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の通知が到達した日前60日以内にその法人の役員であった者で当該取消しの日から2年を経過しないものを含む)
営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者又は成年被後見人であって、その法定代理人が①、②又は④のいずれかに該当する場合
法人であって、その役員のうちに①~③のいずれかに該当する者のあるもの
②運転者を5人以上確保又は確保予定であること
運送業の許可を取得する場合、5台以上の事業用自動車を確保する必要がありますが、その結果、車両の台数分、例えば5台であれば少なくとも5名の運転者を申請の時点で確保又は確保予定である必要があります。
漠然と「確保予定」であるだけでは足りず、具体的である必要があります。
当然ながら、運転者は実際に事業に使用する事業用自動車を運転できる資格・免許を持っている必要がありますので、中型の運転免許しか所持していない者が大型トラックの運転者とすることはできません。
一方で、確実に「確保予定」であればいいわけですから、申請の時点では運転者を雇用しておらず、その時点では運転者が別の会社等に在職中であっても、許可取得までに退職して申請者が雇用することが確実なのであれば問題はありません。
③車両の台数に応じた運行管理者を確保又は確保予定であること
申請時点で、車両の台数に応じて定められた人数の運行管理者を確保又は確保予定である必要があります。
運行管理者とは、事業用自動車の安全運行等の確保や、運転者の指導監督等を行う者のことです。
運送事業を経営するうえで中心となる人的要件です。
必要な運行管理者の人数は、車両の台数が29台までは1人以上、以後、30台増えるごとに1人以上追加しなければなりません。
④整備管理者を確保又は確保予定であること
整備管理者は、事業用自動車の点検整備の実施や点検整備記録簿の管理、車庫の管理等を行います。
整備管理者になるためには、国土交通省令で定められた一定の資格を有しているか、又は一定期間以上の実務経験を有し、かつ、地方運輸局が行う「整備管理者選任前研修」を修了していなければなりません。
3.場所の要件
運送事業を経営するには、事業に使用する営業所、休憩施設、睡眠施設(必要に応じて保管施設)及び車庫を確保する必要があります。
これら必要となる施設に関しては、細かな許可基準が定められています。
これが運送事業の許可申請が複雑である理由の一つです。
この点を確認するためには、現場確認はもちろんのこと、土地の登記簿謄本や公図の調査、営業所を管轄する市町村役場の土地計画法や建築基準法などを担当する部署への確認、住宅地図やインターネット地図を利用した周辺地域の確認が必要です。
①営業所
(1) 都市計画法上の区域区分が原則として市街化調整区域でないこと
都市計画法に抵触しているか否かは、市町村役場の都市計画課等で確認が必要です。
基本的に、建築物が市街化区域内にあり、以下の用途地域に該当しないことが要件となります。
- ア.第一種低層住居専用地域
- イ.第二種低層住居専用地域
- ウ.第一種中高層住居専用地域
- エ.第二種中高層住居専用地域(床面積1.500㎡を超えるもの、又は3階以上の金地区物の場合)
(2) 建築基準法、消防法等に抵触していないこと
市町村役場の建築課等で確認が必要です。
具体的には、営業所とする建物建築物が、現在の建築基準法、消防法等に抵触していな必要があります。
(3) 農地法等に抵触していないこと
市町村役場の農政課、農業委員会等で確認が必要です。営業所所在地の地目が田や畑の場合はそのままでは許可が下りません。
農地転用後でなければ許可がなされませんし、場所によっては農地転用自体が難しい場合もあります。
仮に農地転用を行うとしても、転用の許可を取得するまで1か月~6か月ほど必要となりますので、事業計画自体が変わってくる場合もあります。
(4) 適切な使用権限があること
申請者が、営業所とする建物を使用する法的権限があることを証明する必要があります。
権限がなければ当然建物などを使用できませんし、許可もされません。
(5) 適切な広さがあること
営業所の広さに関しては、何㎡以上というような制限はありません。
しかしながら、事務机や椅子、キャビネット、電話、ファックスなど、運送業の事務を行うために必要な什器備品類が備え付けられる広さがなければ、営業所として認められません。
例えば、事務作業をすることは実質的に不可能な事務所などでは、営業所として許可が下りません。
(6) 車庫から直線距離で10㎞圏内(地域によっては5㎞圏内)の場所にあること
営業所と車庫が併設できない場合は、2点間の距離が直線距離で10㎞圏内(地域により5㎞圏内)にあることが必要です。と
②休憩施設・睡眠施設
(1)休憩施設の要件
これは営業所の要件と同じ考え方です。
広さの制限はありませんが、運転者が十分休憩を取るのに必要な机や椅子を備え付けるられる広さが必要です。
(1)休憩施設の要件
これは営業所の要件と同じ考え方です。
広さの制限はありませんが、運転者が十分休憩を取るのに必要な机や椅子を備え付けるられる広さが必要です。
③車庫
基本的な営業所と同じ考え方ですが、それに加えて、運転者1人あたり2.5㎡以上の広さが必要です。
なお、睡眠施設の設置は必須ではありませんが、運転者が自宅に帰って寝ると8時間以上の休息が取れないような運行がある場合等は、睡眠施設の設置が必要です。
休憩施設と睡眠施設は同じ場所でも問題ありません。その場合、ベッドや布団等が置ける広さの確保が必要です。
営業所と休憩施設・睡眠施設を1つの部屋に設ける場合は、パーティションなどで区切る必要もあります。
①営業所から直線距離で10㎞圏内(地域によっては5㎞圏内)にあること
②使用する車両を完全に収容できる面積があること。具体的には
ア.車両と車両の間に50㎝以上の隙間が確保できること
イ.車庫と車両の間に50㎝以上の隙間が確保できることと
③出入口前面道路の幅員が使用する車両に対して適切であること。具体的には「幅員証明書」が取得できること
④出入口前面道路に通学路などの交通規制がないこと
⑤5m以内に交差点、曲がり角、急な坂がないこと
⑥10m以内に、バス停留所、横断歩道、横断陸橋、踏切がないこと
⑦200m以内に幼稚園、保育園、学校、公園などの児童の行き来する施設がないこと
⑧駐車場出入口の幅が基本的に6m以上、8m以下であること
4.車両の要件
事業用自動車として運送事業に使用する車両は5台以上必要です。この場合、トラクタとトレーラーは併せて1台と計算します。
車両は、車検証の用途欄に「貨物」と記載されているものであれば4ナンバーなどの小型車、例えばワンボックスやワゴン車でも問題ありません。(軽自動車は除外)
車検証上の所有者や使用者が申請者名義である必要はありませんが、その場合は使用権限があることを証明する書類が必要です。
法人の場合、代表者個人名義等の場合は個人から法人への使用承諾書や譲渡契約書が必要です。
車両をリースや割賦で購入するときは、運送業許可取得後でなければリース契約等ができない場合も考えられます。その場合、申請時にはリースの仮契約書等を提出したうえで許可取得後に売買契約書やリース契約書が提出するなど、状況に応じた対応が必要です。
申請の種類 | 報酬(税込) | 実費(証紙代等) |
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一般貨物自動車運送事業 | 440,000円~ | 120,000円 |
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貨物利用運送事業 | 110,000円~ | 90,000円 |
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