医療法人とは
医療法人制度
病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団や財団は、知事の認可を得て、「医療法人」組織とすることができます。【医療法(昭和23年法律第205号。以下「法」という。)第39条、第44条】
この場合、複数の都道府県にまたがって病院等を開設する医療法人を設立するときは、厚生労働大臣の認可が必要となります。
医療法人の責務
医療法人は、自主的にその運営基盤の強化を図るとともに、その提供する医療の質の向上及びその運営の透明性の確保を図り、その地域における医療の重要な担い手としての役割を積極的に果たすよう努めることとされています。【法第40条の2】
医療法人の「非営利性」
医療法人は、医療法において規定された特別の法人です。【法第39条】
また、解散する際の残余財産の帰属先が制限されているほか、剰余金の配当が禁止されており、この点で株式会社などの商法上の会社とも区別されています。【法第44条第5項、第54条】
医療法人の種類
医療法人には、社団である医療法人(以下「社団医療法人」という。)と財団である医療法人(以下「財団医療法人」という。)の2種類があります。
社団医療法人
複数の個人又は法人が集まって設立された法人であり、法人の設立のため、現金、預金、不動産、備品等を拠出して設立する法人です。
財団医療法人
個人又は法人が無償で寄附した財産に基づいて設立される法人です。
定款と寄附行為
社団医療法人は「定款」で、財団医療法人は「寄附行為」で、それぞれ基本事項を定めています。
一人医師医療法人
従来、診療所については「医師若しくは歯科医師が常時3人以上勤務する」というように、一定規模以上のものについて医療法人の設立が認められてきましたが、昭和60年の法改正により、医師又は歯科医師が常時1人又は2人勤務しているような小規模診療所についても法人化の途が開かれました。これをいわゆる「一人医師医療法人」といいますが、医療法上は設立、運営、権利及び義務に関して何ら区別はありません。
医療法人を巡る現状
最近の医療法の改正
平成18年6月21日法律第84号をもって公布された良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)のうち、医療法人に関する規定については、平成19年4月1日から施行されています。
改正の内容
医療法人の業務の拡大
医療法人が、地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第3項に規定する指定管理者として公の施設である病院、診療所又は介護老人保健施設を管理する業務が、本来業務として明確に規定されました。
ただし、指定管理者として公の施設の管理のみをする医療法人を設立することは、法第39条の趣旨に違反するため認められません。
また、医療法人の附帯業務の範囲が、下記のように拡大されました。
- 社会医療法人(下記の(2)参照)の場合、第1種社会福祉事業のうち、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、救護施設、厚生施設及び軽費老人ホーム(A型、B型)を除くものの実施が可能になりました。
- その他の医療法人(社会医療法人を含む。)の場合、第2種社会福祉事業のうち、児童家庭支援センターを除くもの及び老人福祉法(昭和38年法律第133号)に規定する有料老人ホームの実施が可能になりました。
さらに、平成19年5月30日より、介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第15条第3号に規定する適合高齢者専用賃貸住宅の設置及び高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則(平成13年国土交通省令第115号)第3条第6号に規定する高齢者専用賃貸住宅の設置が、医療法人の附帯業務として新たに追加されました。【法第42条】
社会医療法人制度の創設
へき地医療や小児救急医療など地域で特に必要な医療の提供を担う医療法人が新たに社会医療法人として位置付けられました。【法第42条の2】
残余財産の帰属すべき者
残余財産の帰属すべき者が、国、地方公共団体、公的医療機関の開設者、財団医療法人、社団医療法人で持分のないもの、都道府県医師会又は郡市区医師会であって病院等を開設するもの又は病院等を開設する予定であるものとされました。【法第44条第5項】
また、法改正に伴い、施行日以降に新たに医療法人の設立認可申請を行う場合、設立後の医療法人は、財団医療法人又は社団医療法人で持分のないものに限られることとなりました。
なお、社団医療法人で持分の定めのあるものについては、当分の間は、「経過措置型医療法人」と位置づけられることとなりました。【改正法附則第10条第2項】
医療法人の管理体制の見直し
理事若しくは監事又は社員総会若しくは評議員会の各機能が明確に規定されました。【法第46条の2から第49条の4】
医療法人が毎会計年度終了後に作成する書類として、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び監事の監査報告書とし、これらの書類の知事への届出及び閲覧に関する規定が整備されました。【法第51条から第52条】
社会医療法人債の発行
救急医療等確保事業を担う社会医療法人について、公募債である社会医療法人債の発行による資金調達が認められました。【法第54条の2から第54条の8】
医療法人の資産要件の見直し
医療法人の資産要件として定められてきた自己資本比率に関する要件を廃止することとし、病院、診療所又は介護老人保健施設を開設する医療法人は、開設する病院、診療所又は介護老人保健施設に必要な施設、設備又は資金を有しなければならないものとされました。【医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号。以下「規則」という。)第30条の34】
基金制度の利用
医療法人の非営利性の徹底に伴い、持分の定めのない社団法人の活動の原資となる資金の調達手段として、定款の定めるところにより基金の制度を採用することができることとなりました。【規則第30条の37・38】
ただし、社会医療法人及び租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第67条の2第1項に規定する特定の医療法人(特定医療法人)は、基金制度を採用することはできません。
医療法人の設立について
医療法人の設立申請
医療法人を設立するには、次の要件を満たし、医療法人設立認可申請書に必要な関係書類を添付して、設立代表者名で知事あてに申請し、知事の認可を受ける必要があります。【法第44条】
人的要件(社員・理事・監事)
社員
社員は、社団医療法人の構成員であり、社員総会の承認を得て社員の身分を取得します。
社員は、社員総会において1個の議決権及び選挙権を有し、法人の重要事項の決定をすることになります。
その法人及び病院等で働いている者を「社員」と捉えがちですが、社団医療法人の場合、これらの方は「職員・従業員」となり、「社員」とは区別されます。
また、財産的な拠出を行わない場合も、社員となることはできます。ただし、社員はあくまでも自然人でなければならず、医療法人が他の医療法人の社員になったり、営利法人が社員になることはできません。
なお、社員は、原則として3人以上としてください。
役員
医療法人は、役員として理事3人以上及び監事1人以上置かなければなりません。【法第46条の2】
ただし、いわゆる一人医師医療法人にかぎり、別途知事の認可を得た場合は、理事を2人にすることも可能です。
役員は、欠格条項に該当していない方で、自然人に限られます。
また、設立しようとしている法人と取引関係にある営利企業の役職員になっている方が役員に就任することは望ましくありません。
※欠格条項に該当していない方 【法第46条の2第2項】
○ 成年被後見人又は被保佐人でない方
○ 法、医師法、歯科医師法及び関係法令に、現在及び過去2年間違反していない方
○ 禁錮以上の刑に処せられ、刑を執行されているか執行猶予期間中でない方
理事
理事は、法人の意思決定に基づく職務執行の権限を持ち、医療法人の常務を処理します。
当該医療法人が開設するすべての病院、診療所又は介護老人保健施設の管理者は、理事に加えなければなりません。【法第47条】
理事長
理事長は、原則として医師又は歯科医師である理事の中から選出します。そして、理事長のみが医療法人の代表権を持ち、医療法人の業務を総理することになります。【法第46条の3】
監事
監事の職務は、法第46条の4第7項に規定されています。監事は、理事又は医療法人の職員(当該医療法人の開設する開設する病院、診療所又は介護老人保健施設の管理者その他の職員を含む。)を兼ねることはできません。【法第48条】
資産要件
- 医療法人は、病院、診療所又は介護老人保健施設を行うのに必要な資産を有していなければなりません。【法第41条、規則第30条の34】
必要な資産とは、具体的には、病院 等を開設するのに必要な土地、建物等の不動産及び医療法等の規定によって備え付けるべき設備並びにその他診療に必要な医療機械器具等をいいます。 - 医療法人の土地、建物等は、法人が所有することが望ましいですが、賃貸借契約であっても契約が長期間にわたるもので、かつ、確実なものである場合は差し支えありません。
- 賃借料については、近隣の土地、建物等の賃借料と比較して著しく高額である場合には、医療法第54 条(剰余金配当禁止)の規定に抵触するおそれがあるので、注意が必要です。
- 土地、建物を第三者から賃借する場合は、当該土地及び建物について賃貸借登記をすることが望ましいとされています。
医療法人の名称
法人名には、「医療法人」を入れてください。また、既存の医療法人(県内、他県の隣接地域にあるものを含む。)の名称と、同一又は紛らわしい表記は避けてください。
医療法人の財産
拠出(寄附)財産(負債を除く。)
財産の種類
- 基本財産 ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ 不動産、運営基金等の重要な資産
- 通常財産 ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ 基本財産以外の資産
財産の評価額
- 不動産、借地権 ・ ・・ ・・ ・・ 不動産鑑定評価書又は固定資産評価証明書の額
- 預 貯 金 ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ 残高証明の額の範囲
- 医業未収金 ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・前年実績からの推計値
- 医薬品、材料等 ・ ・・ ・・ ・・・帳簿価格
- 医療用器械備品 ・ ・・ ・・ ・・減価償却した薄価
負債の引継ぎ
拠出(寄附)財産の取得時に発生した負債は、医療法人に引き継ぐことができます。ただし、法人化前の運転資金、消耗品類の取得に要した費用に係わる負債は、引き継ぐことができません。負債の引継ぎは、債権者の承諾を必要とします。
運転資金
原則として初年度の年間支出予算の2か月分に相当する額とします。 預貯金、医業未収金等の換金が容易なものとします。また、設立後の金融機関等からの借入金は、運転資金として算入できません。
医療法人設立認可申請・認可の流れについて
医療法人設立認可申請
設立認可申請
医療法人を設立するには、知事の認可を受ける必要があります。そのため、医療法人を設立しようとする場合は、申請書に必要な添付書類を添えて、知事に認可の申請をすることになります。
審査
県では、申請のあった医療法人の資産が医療法第41条に規定される要件に該当しているかどうか、定款又は寄附行為の内容が適法であるかどうかなどの点について審査し、関係各所の意見を聞いた上で認可を行うことになります。
審議会の日程及び提出期限
なお、申請にあたっては医療審議会が年2回程度(県によって異なります)開催され、それぞれ申請書類の提出期限が決められています。申請書類の提出窓口は主たる事務所の所在地を管轄する関係機関となりますが、申請内容に関して事前協議は必須です。
設立登記
設立認可を受けた場合は、主たる事務所の所在地を管轄する登記所において、設立認可のあった日から2週間以内に設立の登記をすることが必要となり、登記をすることによって医療法人は成立することとなります。
登記にかんしてはグループのHighField司法書士法人へ速やかに引き継いで対応させて頂きます。登記を済ませたら、法人の登記事項証明書を添付のうえ「医療法人登記完了届」を提出いたします。
基金制度
基金とは
基金とは、社団医療法人に拠出された金銭その他の財産であって、当該医療法人が拠出者に対して、定款の定めるところに従い返還義務を負うもので、剰余金の分配を目的としないという医療法人の基本的性格を維持しつつ、その活動の原資となる資金を調達し、その財産的基礎の維持を図るための制度となります。【規則第30条の37・38】
基金を引き受ける者の募集等に関する定款の定め
基金制度を採用する場合は、基金を引き受ける者の募集をすることができる旨を定款で定めることが必要となります。
募集事項の決定
基金を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければなりません。
- 募集に係る基金の総額
- 金銭以外の財産を拠出の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
- 基金の拠出に係る金銭の払込み又は金銭以外の財産の給付の期日又はその期間
なお、設立時社員は、募集事項を定めようとするときは、その全員の同意を得ることが必要となります。
基金の申込み
社団医療法人は、基金を引き受ける方の募集に応じて基金の引受けの申込みをしようとする方に対し、基金の募集事項に関することを通知することが必要となります。
基金の割当て
社団医療法人は、申込者の中から基金の割当てを受ける方を定めて、その方に割り振る基金の額を定めなければなりません。この場合は、当該申込者に割り当てる基金の額を、拠出する額よりも減額することもできます。
基金の申込み及び割当に関する特則
基金を引き受けようとする方が、その総額の引受けを行う契約を締結する場合には、上記は適用しません。
金銭以外の財産の拠出
基金に拠出する金額の価格が、500万円を超える場合には、その価格が相当であると弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人の証明が必要となります。
次に掲げる方は、証明をすることはできません。
- 理事、監事又は使用人の方(法人の設立前にあっては、設立時社員、設立時理事又は設立時監事)
- 基金の引受人
- 業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない方
- 弁護士法人、監査法人又は税理士法人であって、その社員の半数以上がこれらに掲げる方に該当する場合
基金の返還
基金の返還は、定時社員総会の決議によって行わなければなりません。社団医療法人は、ある会計年度に係る貸借対照表上の純資産額が次に掲げる金額の合計額を超える場合は、当該会計年度の次の会計年度の決算に関する定時社員総会の日の前日までの間に限り、当該超過額を返還の総額の限度として基金の返還をすることができます。
- 基金(代替基金を含む。)の総額
- 資産につき時価を基準として評価を行っている場合において、その時価の総額がその取得価額の総額を超えるときは、時価を基準として評価を行ったことにより増加した貸借対照表上の純資産額
- 資本剰余金の価額
これらに違反して基金の返還をした場合は、返還を受けた者及び返還に関する職務を行った業務執行者は、医療法人に対して、連帯して違反して返還された額を弁済する責任を負います。また、違反して基金の返還がされた場合は、医療法人の債権者は、返還を受けた方に対し、返還の額を医療法人に対して返還することを請求することができます。
代替基金
基金の返還を行う場合には、返還する基金に相当する金額を代替基金として計上する必要があります。代替基金は、取り崩すことはできません。
基金の利息の禁止
基金の返還に係る債権には、利息を付することができません。
医療法人の運営
医療法人の附帯業務
医療法人は、病院等の運営に支障のない限りにおいて、法に定められた業務(附帯業務)を行うことができます。【法第42条】
剰余金の配当禁止
医療法人が剰余金(利益金)を出しても、これを拠出者(社員)等に配当することはできません。
また、配当でなくとも事実上の「利益の分配」とみなされる行為も禁止されています。したがって、役員等へ「賞与」等の臨時給与を出すことや、役員等に対しての貸付等を行うことはできません。【法第54条、第76条第5号】
医療法人の義務
事業報告書等の提出
医療法人には、毎会計年度の終了後3か月以内に、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書(以下「事業報告書等」という。)、監事の監査報告書を知事に届け出ることが義務付けられています。【法第52条】
書類の整備
医療法人は、事業報告書等、監事の監査報告書、定款又は寄附行為を常に事務所に備えておくことが義務付けられています。
また、社員若しくは評議員又は債権者から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、閲覧に供しなければなりません。【法第51条、第51の2】
登記の届出
医療法人は、設立登記をしたときや登記事項に変更が生じて変更登記したときは、登記内容を知事に届け出なければなりません。【医療法施行令(昭和23年政令第326号。以下「施行令」という。)第5条の12】
役員変更の届出
医療法人は、その役員に変更があったときは、変更内容を知事に届け出なければなりません。【施行令第5条の13】
医療法人の経営の透明性の確保
知事は、定款若しくは寄附行為又は事業報告書等、監事の監査報告書の届に係る書類について請求があった場合には、閲覧に供します。【法第52条】
医療法人に対する指導監督
知事は、医療法人の経営を適正に保つために、適宜適当な手段を用いて指導監督します。
報告、立入検査
医療法人の業務若しくは会計が法令、法令に基づく知事の処分、定款(寄附行為)(以下「法令等」という。)に違反している疑いがあり、又はその運営が著しく適正を欠く疑いがあると認められるときは、その法人に対し、報告を求め、又はその事務所に立入検査をすることがあります。【法第63条】
改善等の命令・勧告
医療法人の業務若しくは会計が、法令等に違反し、又はその経営が著しく適正を欠くと認めるときは、その法人に対し、期限を定めて、必要な措置をとるよう命令します。その法人が、命令に従わないときは、期限を定めて、業務の一部又は全部の停止を命令したり、役員の解任を勧告したりします。【法第64条】
設立認可の取消し
医療法人が、設立した後又はすべての病院、診療所及び介護老人保健施設を休止若しくは廃止した後1年以内に正当な理由がないのに、病院、診療所又は介護老人保健施設を開設しないとき、又は再開しないときは、設立の認可を取り消すことがあります。【法第65条】
医療法人が、法令の規定に違反し、又は法令に基づく知事の命令に違反した場合において、他の方法により監督の目的を達することができないときに限り、設立の認可を取り消すことがあります。【法第66条】
報酬一覧
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申請の種類 | 報酬(税込) | 実費(証紙代等) |
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医療法人認可手続 | 要相談 | - |
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